『問いつめられたパパとママの本』 伊丹十三
初めましての方は「とりあえずご挨拶 - 本の棚」をご一読くださると幸いです。
このブログを読んでいただいている方は、
おそらく本に多少なりとも興味がありご覧いただいているのだと思います。
そして何かしらを「知る」ことに興味がある方なのだと思います。
今回は新しい形で「ある分野」にちょっと詳しくなっちゃうこんな一冊。
『問いつめられたパパとママの本』 伊丹十三
(中公文庫・定価590円+税・ページ総数208頁)
題名だけ見ると何の本なのかと思います。
ちなみに、先ほど申し上げた「ある分野」とは「科学」です。
科学。
「ほう」と身を乗り出す方もおられれば
「うげー」と顔をそむける方もおられるでしょう。
私は完全に後者です。苦手です。
難しい用語や数式なんて出てこられたらもうお手上げ、ぽいっと放ってしまいます。
この本はそんな私と同じように「うげー」となってしまう
どちらかというと文系、な人の為の
“面白い”科学の本。面白いです。結構、面白い。
テーマは“子どもが抱く素朴な疑問に答えること”
「空はなぜ青いの?」
「なぜお月様は僕が歩くと追っかけてくるの?」
「テレビはどうして映るの?」などなど。
素朴で、私たちも「そういえばなんでやろ・・・」と答えに詰まってしまう、
そんな疑問に科学で答えてやろうじゃないかというのが本書です。
好奇心旺盛な子どもたちの疑問に答えられる「パパとママ」になる為に。
ということでこの題名なわけですね。
先ほど文系にも面白いんだと、やたらと言いましたが
その秘密は著者の、エッセイのような文体、言葉のはこび方にあります。
専門用語は必要最低限に、あとは馴染みのある用語で、
話し言葉で綴られていく科学のお話。
科学の「説明」というよりは科学の「お話」。
小難しい考え方は要らない、
軽い気持ちで読むだけで、身近な疑問を「ふーん」「へー!」と解消してくれるわかりやすさと
時折はさまれる著者の“つぶやき”からくる面白みを兼ね備えた、
読んでいて楽しいお話です。
たまに「ん?」と思えば、
どうもみなさん、釈然とした顔をしてらっしゃらないなあ。(p.54)
なんて言葉が出てきて、明確な答えがきたり、
知人女性との会話を引っ張ってきて
この大理論、残念ながらまったく間違っています。しかし、なんですね、こういうことを大威張りで教えてくれる女の人というのは、僕はやっぱり可愛いと思うなぁ。嬉しくなってしまう。(p.68)
と、著者のつぶやきが挿まれたり、
空が青い理由を説明する中で
われわれがなにげなく眺めやる世の中にありとある物という物が、ひそかにある色をはねかえしたり、ある色を吸い込んだりしていることを思うと、なんだかあたり一面にわかに色めきたつような、そらおそろしい気がするではありませんか。(p.30)
なんて言葉がこぼれていたり。
他の科学の本では見られない、エッセイスト伊丹十三さんならではの一面が見られます。
ちなみに、
“子ども”からの40の質問それぞれに6~9ページほどで簡潔に答えてくれますので
空いた時間にちょこっと読むだけで、
「人工衛星ってなんで落っこちてこないの?」なんて無邪気に聞かれても
パッパッパーと答えられちゃいます。
「面白いな~」と思っているうちに「なんかいろいろ知っちゃったな!」
となる、大変お得な一冊です。
ぜひご一読ください。
P.S.
もし、この本を読むか迷っていらっしゃる方がおられたら
ぜひ最初の2ページを読んでみてください。
きっと読んでみたくなります。