『風が強く吹いている』 三浦しをん
初めてこのブログをご覧いただいている方は、記事の一つ目「とりあえずご挨拶」を見て頂けると幸いです。
第一弾は、王道の青春小説です。題材は「走ること」。
『風が強く吹いている』三浦しをん
(新潮文庫・定価840円+税・ページ総数670頁)
王道であり、"胸アツ"です。かなり熱い。
あまり本を読まない方、ページ数を見て「やーめた」とか思わないでください。
長編ですね、でも読み切っちゃうと思います。
『舟を編む』『まほろ駅前多田便利軒』など人気著作の多い三浦しをんさんの作品。
だいたいの書店で置いてあると思いますので手に入りやすいはずです。
主人公はとある事情で陸上から離れた、でも走ることからは離れられない
天才ランナー走(かける)。
そんな走が灰二と出会って、たどり着いたオンボロアパート竹青荘。
そこに暮らす九人の住人達。
年齢も性格もこれから進んでいく道もてんでバラバラ、
ただ住む場所と大学がたまたま同じだっただけの十人のど真ん中で
ある日灰二が放った言葉は「そう、駅伝。目指すは箱根駅伝だ。」
「箱根駅伝」とは。「走る」とは。
そしてあまりにも無謀な挑戦の中で、
十人それぞれが目にしたもの、掴んだものとは...
この作品の魅力の一つは登場人物たちです。
主人公は走と書きましたが、十人全員がほぼ主人公並みの存在感を放っています。
キャラクター的にもそうですが、
彼らの、何かをこらえる姿、逃げ出す姿、屈折する気持ちや様々な喜びは
とても濃く描かれています。
そして何より、最大の魅力は終盤、第九章「彼方へ」からの興奮の250ページ。
“迫力”の一言です。長いですが、一気に読まずにはいられない。
まるで彼らを目の前にしているような、
まるで自分が彼らになって走っているかのような、
そんな気持ちになる、胸に迫るラストです。(思い出して鳥肌たってます)
「ずっとあとになって、俺はきっと、この一年を懐かしく切なく思い返す。」(p.575)
十人のうちの1人、キングのこのシンプルな言葉。この物語を読むと沁みるんです私。
今「なんか疲れちゃったな」なんて感じてる方にもオススメです。
年齢関係なく"胸アツ"になる時間って、結構なかなかいいもんです。
ぜひ一度読んでみてください。
この私の拙い紹介では、申し訳ありませんが、魅力は伝えきれていません。
すみません。ぜひ。ご参考までに。ちなみに映画化されてます。
P.S.
読み終わった方はたぶん箱根駅伝が見たくて仕方なくなってると思いますので
来年のお正月は、箱根駅伝を見る予定を組むことをお奨め致します。